ルなどは70年代、80年代を通じて1を僅か上回るにすぎないが、発展段階の初期的なマレーシア、インドネシアなどは2を大きく上回っているし、タイなども1を上回っている一方、フィリピンなどはそうした状況にない。
こうしてGDPの増加率を上回る鉱工業生産の高い増加率が、結果として鉱工業のシェアを増大させる産業構造の変化をすすめてきているのである。しかし、1970年代に比べれば1980年代は各国共通して弾性値も低下し、構造変化のテンポも次第に鈍ってきていることも否定できない。以上のような事態を確認した上で、つぎに産業構造の変化を効率を追求する経済活動という面から検討してみよう。産業別生産額の構成比を産業別就業者数の構成比で除した値を比較生産性と称するが、これが1である場合はその産業の生産性は全産業の生産性と等しいことになり、1を上回る場合は経済的有利性をもつ産業であることを意味する。
第1次産業の比較生産性が1を下回り、第2次産業のそれが1を上回る傾向は各国に共通している。日本では第1次産業の比較生産性が1960年代の0.5を若干下回るところから90年の0.36へと長期低下傾向にあり、他方第2次産業のそれは60年の1.35から長期低下傾向にあり90年には1を僅かながら下回る0.97にまでなっている。第1次産業、第2次産業とも1を下回ることは第3次産業のみ1を上回ることを意味しており、いわゆるサービス経済化が産業の有利性という面から促進される段階に指しかかっていることを反映しているといえるのである。(第5表参照)
第1次産業と第2次産業の比較生産性が前者で1を下回り、後者で1を上回るという共通の傾向が、各国通じて農工転換をすすめてきた要因といえるのであるが、そのギャップが大きい程その転換速度を大きくしているともいえる。タイ、マレーシア、韓国などがこうした傾向を強くもっていることと符合している。しかし、これらの国でも90年においてなお第2次産業の比較生産性が1をこえ、なお依然として第2次産業のシェア拡大という産業構造の継続の可能性を示唆している。ところで、第1次産業の比較生産性が低いことは、これらの産業分野には厚い層の不完全就業者を抱え、その条件とも絡んで、労働集約的な生産構造となっていることに他ならない。こうした潜在的な過剰人口は、長期的には非農業セクターに対
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